考えなくていい仕事を増やす、という改善

考えなくていい仕事を増やす、という改善のアイキャッチ画像 EC・デジタル活用

日々のEC運営の中で、ふと立ち止まる瞬間があります。
「なぜ、こんなに追われているのだろう」と。

受注処理。問い合わせ対応。商品登録。撮影の段取り。広告の確認。
一つひとつは、特別に難しい作業ではありません。
それでも、夕方になると頭が熱を持っているような感覚が残る。
仕事が終わっていないというより、思考が終わっていない。

忙しさの正体は、作業量だけではないのかもしれません。
毎回“考え直していること”が多すぎる。
そこに気づいたとき、改善の視点が少し変わりました。

この文章は、業務効率化の「正解集」ではありません。
ツールやアプリの紹介でも、AIの便利機能の話でもない。
ただ、現場で息が詰まりかけたときに、どこをどう捉え直せば少し軽くなるか。
その整理の記録です。


結論

効率化の目的は、速くすることではなく「考えなくていい仕事」を増やすこと。

速さを求めると、現場は消耗します。
速く回しても、次のタスクが雪崩のように流れ込むだけだからです。

一方で、「考えなくていい仕事」を増やすと、疲れ方が変わります。
判断の回数が減る。説明の回数が減る。確認の回数が減る。
すると、同じ仕事量でも、脳の使用量が違ってくる。

この差は、地味ですが大きいです。


仕事が重くなる典型パターン

“毎回ゼロから”が積み上がっている

忙しい現場には、共通する癖があります。
それは、「その場しのぎが積み上がっている」ことです。

  • 以前のトラブル対応が、そのまま恒久運用になる
  • ルールが人によって違い、確認が増える
  • 説明の言い回しが毎回変わり、質問が増える
  • 判断の基準が言語化されず、属人的な確認が残る

どれも「悪いこと」ではありません。
むしろ、真面目にやってきた証拠でもあります。

ただ、その積み重ねが臨界点を超えると、
仕事は“やることが多い”ではなく、“考えることが多い”状態になります。
そして、その状態が一番思考の余白を奪います。


テンプレ化

部下のためというより、自分を守るため

テンプレ化という言葉は、どこか教育文脈になりがちです。
「部下が自走できるように」「属人化をなくすために」。
もちろん、それも正しい。

ただ、現場で本当に効くのは、もう少し手前です。
テンプレ化は、指示を出す側の消耗を減らす道具です。

たとえば、問い合わせ対応。
「このケースはこう返す」が手元にないと、毎回考え直します。
文章を作る。言い回しを整える。必要事項を確認する。
返信したあとも、どこか落ち着かない。

テンプレがあると何が起きるか。
答えは単純で、判断が減ります。
「このパターンはこのテンプレを土台にする」だけで、迷いが消える。

ここで重要なのは、テンプレを“完璧な正解”にしないことです。
テンプレは、正解を固定するものではなく、迷いを減らすもの。
現場では例外が必ず出ます。
だからこそ、テンプレはこういう形が現実的です。

  • まずこれを使う(たたき台)
  • 例外はここで分岐する(判断ポイント)
  • ここから先は相談(線引き)

テンプレ化で増えるのは、自由度ではなく再現性です。
再現性が上がると、質問が減ります。
質問が減ると、思考する時間が生まれます。


自動化

“楽をする”ではなく、“役割を取り戻す”

自動化という言葉には、なんだか無機質で、少しだけ違和感を覚えることがあります。
手を抜くようで気が引ける。
人の仕事を奪うようで落ち着かない。
日本の現場では、特にそうかもしれません。

ただ、EC運営の実務には、明確に「人がやる理由が薄い作業」があります。
繰り返し。転記。形式化された確認。
条件が決まっている判断。

ここを人が抱え続けると、
本来人がやるべき仕事――調整・判断・例外処理・改善設計――が後回しになります。
そして、後回しにした結果、現場の火種が増え、さらに忙しくなる。

自動化は、スピードアップのためというより、
人が人として仕事をするための余白を取り戻す手段だと感じています。

現場で「自動化しやすいもの」は、だいたい共通しています。

  • 毎日同じ手順で行うチェック
  • 数値や文字列の加工(整形・結合・抽出)
  • 報告用の体裁づくり(定型フォーマット)
  • ルールが固まっている分類・振り分け

ここを一気に変える必要はありません。
むしろ、最初は一つで十分です。

「毎日やっていて、しかも頭を使っていないのに疲れるもの」
そこに自動化の余地があることが多いです。


AI活用

正解を出すためではなく、思考を軽くするため

AI活用という言葉は、期待値が上がりやすい。
「AIで全部楽になる」「AIが代わりに考えてくれる」。
現場で使い始めると、そこまで都合はよくないと分かります。

ただ、役割を正しく設定すると、AIはかなり頼れます。
AIは、万能な答えを出す人ではなく、考えを整える補助輪です。

AIが得意なのは、だいたい次の領域です。

  • 文章の下書き(メール、返信、依頼文、注意書き)
  • 手順の言語化(作業フローのたたき台)
  • チェックリスト化(抜け漏れの棚卸し)
  • 既存文章の整形(冗長な箇所を削る、丁寧語にする)
  • 視点の追加(見落としがちな観点を足す)

ここでのポイントは、AIに「決めさせない」ことです。
AIに意思決定を委ねると、現場は崩れます。
でも、下書き・整形・棚卸しに使うと、現場は軽くなります。

特に、管理側の仕事は「文章」が多い。
上長への報告、外注への依頼、社内への共有、顧客への返信。
文章は、作業のようでいて、毎回“考える仕事”です。

AIで下書きを作り、最後は自分の言葉に整える。
この分担だけでも、消耗が減ります。


「仕組み化」には順番がある

まず“繰り返し”を拾う

仕組み化というと、立派な設計図を想像しがちです。
マニュアルを整備して、ツールを導入して、フローを整えて。
現実は、そんな余裕がない日が多い。

だから、順番を簡略化します。
僕は、次の順番が現実的だと思っています。

  1. 繰り返しを見つける
  2. テンプレで固定する
  3. できるところだけ自動化する
  4. 残った判断をAIで軽くする

いきなり4から始めると、だいたい迷子になります。
AIは便利ですが、土台が整っていないと、結局こちらが判断する量が増えるからです。

逆に、テンプレが整っている現場では、AIは加速装置になります。
「このテンプレをベースに、ケースに合わせて整えて」
この指示ができるだけで、精度も速度も上がる。


チームの自走は「意欲」より「基準」で決まる

待たれているのは、やる気ではなく地図

部下が質問してくる。指示を待つ。
その状況に対して、「もっと自発的に動いてほしい」と思うことがあります。

でも、ここも構造の話だと感じています。
基準が見えないのに自発的には動けない。
それは怠慢ではなく、事故を避ける自然な反応です。

自走を増やすために必要なのは、気合ではなく、地図です。

  • ここまでやればOK
  • ここは必ず報告
  • ここは各自判断
  • 例外はこのパターン

この線引きがあると、質問は減ります。
質問が減ると、指示する側の負担が減る。
そして、指示する側に余白が生まれると、また仕組み化が進む。

この循環を作るには、まず小さなテンプレからで十分です。
大きなマニュアルではなく、現場で使われる短い地図。


ここまでのまとめ

軽くする対象は「作業」ではなく「思考の回数」

効率化・自動化・AI活用という話題は、
つい「早く回す」方向へ引っ張られます。

でも、現場の苦しさは、速度よりも思考の消耗から来ることが多い。
だから、改善の焦点はこうなります。

  • 考えなくていい仕事を増やす(テンプレ化)
  • 人がやらなくていい繰り返しを減らす(自動化)
  • ゼロから作らない(AIで下書き・整形・棚卸し)

派手ではありません。
ただ、日々の疲れ方が変わります。


終わりに

業務改善は、立派でなくていいと思っています。
一度に整えなくていい。
完璧な仕組みを作らなくていい。

ただ、毎日少しずつ削られていく状態だけは、放置しない。
そのために、
「考えなくていい仕事を増やす」という視点を持っておく。

それだけで、仕事は少し軽くなります。
今日を軽く、心地よく。
その方向へ寄せるための考え方として、ここに置いておきます。