導入前に整理しておいてよかったこと

生成AIを使い始めてしばらく経った頃、
便利さよりも、わずかな戸惑いが先に立つ瞬間がありました。

思ったほど楽にならない。
期待していたほど、仕事が軽くならない。
それどころか、余計に考えることが増えた気がする。

そんな感覚を抱いた人は、少なくないのではないでしょうか。

私自身も、最初はそうでした。
だからこそ、いま振り返ってみて、
「導入前に整理しておいてよかったこと」がいくつかあります。

今回は、その整理の話です。
ノウハウや使い方ではなく、
考え方の土台に近い部分について書きます。


AIを使う前に、仕事はすでに重かった

最初に感じていた違和感は、
AIそのものよりも、仕事の状態にありました。

忙しさの中で、
・どこから手をつけるべきか分からない
・判断の基準が揺れている
・やることが多いのに、何が重要か見えない

そんな状態のまま、
「AIを使えば何とかなる」と思っていた節があります。

けれど、
整理されていない仕事は、AIを入れても整理されない。
これは、あとから静かに腑に落ちたことでした。

AIは、混乱を片づけてくれる存在ではありません。
混乱をそのまま、速く出力してくるだけのこともあります。

だからまず、
「いまの仕事は、どんな状態なのか」
そこを言葉にしておく必要がありました。


AI導入前にやってよかったのは「仕事の棚卸し」

結論から書くと、
導入前にやってよかったことは、
仕事を“軽くする前に、見える形にしたことです。

といっても、
大げさな業務整理ではありません。

・毎日、繰り返している作業
・考える時間が多く取られている工程
・「なんとなく不安」で手が止まる場面

それらを、ただ書き出しただけでした。

AIに何を任せるかを考える前に、
「自分は、どこで重くなっているのか」を知る。
その順番は、とても大事だったと思います。


「考えているつもり」になっていた部分

書き出してみて、
少し意外だったことがあります。

それは、
考えているつもりで、実は迷っていただけの時間
思った以上に多かったことです。

例えば、

・メールを書く前に、頭の中で何度も言い回しを巡らせている
・資料を作る前に、構成が決まらず手が止まる
・上司や同僚の反応を想像して、判断を先延ばしにする

これらは「思考」に見えますが、
実際には、前に進まない時間でもあります。

AIは、この部分と相性がよかった。
ただし、それは
「考える代わりに任せた」からではありません。

「迷っている状態」を自覚できたから、
AIに投げられるようになった、という感覚です。


AIに任せる前に決めておいたこと

導入前に、もうひとつ整理しておいてよかったのは、
AIに任せないことでした。

すべてを効率化しようとすると、
どこかで違和感が生まれます。

僕の場合、
・最終的な判断
・相手への配慮が必要な言葉
・自分の考えをまとめる時間

これらは、AIに委ねないと決めました。

理由は単純で、
そこまで手放してしまうと、
仕事が軽くなる前に、手応えが消える気がしたからです。

AIは、代替ではなく補助。
この線引きを先に決めておいたことで、
使うたびに迷わずに済みました。


「使いこなそう」としなかったこと

もうひとつ、意識していたのは、
最初から使いこなそうとしなかったことです。

便利さを実感すると、
「もっと活用しなければ」
「まだ足りていないのでは」
そんな焦りが出てきます。

けれど、
生成AIは資格試験ではありません。

できることが増えるより、
疲れない使い方が続くことの方が大切でした。

最初は、
・文章のたたき台
・考えの整理
・言い換えの確認

それだけで十分でした。

それ以上のことは、
あとから、自然に広がっていきます。


AIは、思考を奪うものではなかった

導入前は、
「AIに頼ると、考えなくなるのではないか」
そんな不安もありました。

実際に使ってみて感じたのは、逆でした。

考える量が減ったというより、
考えなくていい部分が減った、という感覚です。

どう書くか、ではなく、
何を書くかに集中できる。

どう整えるか、ではなく、
何を残すかを選べる。

その余白が、
仕事の重さを少しだけ変えてくれました。


整理してから使うと、軽くなる

改めて振り返ると、
AI導入前にやってよかったことは、
派手な準備ではありません。

・仕事を見える形にした
・迷っている場所を自覚した
・任せない部分を決めた
・期待しすぎなかった

それだけです。

でも、その整理があったから、
AIは「特別な存在」ではなく、
日々の仕事を軽くする道具になりました。


少し整えてから、使う

もし、いま
「便利なのは分かるけれど、どう使えばいいか分からない」
そう感じているなら、

新しい使い方を探す前に、
いまの仕事を、少しだけ整えてみる。
それだけでも、十分だと思います。

AIは、整った場所でこそ、静かに力を発揮します。

この文章も、
まだ途中の記録です。
使いながら、考えながら、少しずつ整えている最中です。

今日が、ほんの少し軽くなる。
そのきっかけとして、
この整理の話が残れば、それで十分です。