ECの仕事をしていると、
いつの間にか「この作業はあの人しか分からない」という状態が増えていきます。
忙しさの中では、それが自然な流れのようにも感じられます。
覚えるより、任せた方が早い。
説明するより、自分でやった方が確実。
そうやって一つずつ積み重なっていった結果、
業務が人にくっついたまま離れなくなる。
これは怠慢というより、
現場が回っている証拠でもあります。
それでも、ふと立ち止まる瞬間があります。
誰かが休んだとき。
誰かが辞めるかもしれないと感じたとき。
その人がいない前提で、仕事を想像できなくなる。
今回は、
「属人化をなくすために何をすべきか」ではなく、
「属人化しきらないために、いま続けていること」を
整理して書いてみようと思います。
属人化は、悪ではない
最初に一つだけ整理しておきたいことがあります。
属人化そのものが、
必ずしも悪いわけではありません。
ECの現場は流動的で、
ツールも仕様も頻繁に変わります。
経験値がある人に任せた方が、
スピードも精度も上がる場面は確実にあります。
問題になるのは、
「属人化していること」ではなく、
「属人化している理由が分からないこと」だと思っています。
なぜその人しかできないのか。
どこからが個人の判断で、
どこまでが共有できる作業なのか。
それが整理されないまま、
日々が過ぎていくこと。
そこに、息苦しさが生まれます。
「教える」より、「残す」を意識する
マニュアルを作らなければ、
と何度も思いました。
でも現実には、
時間が取れない。
腰を据えて書く余裕がない。
完璧にまとめようとして、
結局手が止まる。
そこで考え方を少し変えました。
教えることより、
残すことを優先する。
誰かに説明した内容を、
その場で簡単にメモする。
チャットで送った文章を、
消さずに保管しておく。
画面共有で説明した内容を、
箇条書きで残しておく。
完成したマニュアルではなく、
途中の思考や説明の断片を
散らばったまま残す。
きれいではありませんが、
「何もない状態」よりは、
ずっと呼吸がしやすくなります。
判断を奪わない形で任せる
任せるとき、
すべてを細かく決めたくなる瞬間があります。
でも、それを続けるほど、
判断は自分に戻ってきます。
そこで意識しているのは、
「やり方」ではなく
「考え方」だけを渡すことです。
この作業は、
何を優先しているのか。
何を避けたいのか。
どこまでなら自由に判断していいのか。
答えではなく、
枠だけを共有する。
そうすると、
作業はその人の経験になります。
完全に同じやり方にはなりませんが、
それでいいと思っています。
属人化を恐れて、
経験まで奪ってしまわないように。
そのバランスを、
毎回探っています。
すべてを共有しようとしない
以前は、
「全部分かる状態」を目指していました。
でも、それは現実的ではありませんでした。
いまは、
「止まらない状態」を目標にしています。
細部は分からなくてもいい。
引き継ぎが完璧でなくてもいい。
最低限、次の一手が打てること。
業務を止めないために必要な情報と、
個人の工夫や癖を、
意識的に切り分ける。
全部を共有しなくても、
チームは回る。
そう思えるようになってから、
少し肩の力が抜けました。
属人化と向き合うのは、余裕があるときではない
属人化について考える余裕がないから、
属人化が進む。
この矛盾は、
多くの現場で起きていると思います。
だからこそ、
完璧な対策を考えるより、
小さな違和感を放置しないこと。
「これ、自分しか分からないな」と思ったら、
一行だけ残す。
誰かに説明したら、
そのまま文章に残す。
それだけでも、
未来の自分や、
チームの誰かが助かるかもしれません。
いまは、途中のままでいい
属人化をなくせているかと聞かれたら、
正直、そうとは言えません。
いまも人に頼り、
自分で抱え、
試行錯誤の途中にいます。
それでも、
何も考えずに進むより、
少し立ち止まり、
考えた痕跡を残すようになりました。
それだけで、
仕事が少し軽くなった気がしています。
この文章も、
答えではなく、
途中の整理です。
同じ場所で立ち止まっている誰かの、
思考を整える材料の一つになれば、
それで十分だと思っています。



