AIは手段でしかないと、やっと腑に落ちた

AIは手段でしかないと、やっと腑に落ちたのアイキャッチ画像 02 | AIと仕事

違和感のはじまり

夜、デスクに向かっていた。

画面には、AIツールが開いていた。 カーソルが点滅している。

何かを打ち込もうとして、 止まった。

聞きたいことは、あった。 やりたいことも、あった。

でも指が、動かなかった。

窓の外は、もう暗かった。 エアコンの音だけが、低く続いていた。

冷めかけたコーヒーが、 マグカップの中にあった。 飲もうとして、忘れていた。

部屋の照明が、 少し黄色く見えた。

疲れているのか、 電球の色なのか、 わからなかった。

「何を聞けばいいんだろう」

そう言葉にしたわけではなく、 ただ、手が止まっていた。

しばらくして、 ツールをそっと閉じた。

何もできなかったわけではない。 ただ、何かが引っかかっていた。

その夜のことを、 しばらく忘れていた。


この記事を書く背景

AI活用、という言葉が増えた。

ニュースで。SNSで。 職場の、誰かの話の端に。

「使いこなせているか」 「乗り遅れていないか」

そういう感覚が、 空気のようにそこにあった。

僕もその空気を吸っていたと思う。

昼休み、スマートフォンを見ながら AI仕事の記事を読んでいた。

読み終えて、 何も残らなかった。

ただ、少し焦った気持ちだけが あった気がする。

意識していなかったけれど、 どこかで「うまくやらなければ」と 思っていた。

でも、整理されていなかった。

うまく言えないまま、 しばらく過ごしていた。


思考整理としてのAI

あるとき、試してみた。

頭の中にあった、 まとまっていない考えを そのまま打ち込んだ。

文章になっていなかった。 言いたいことが自分でも わかっていなかった。

それでも、とにかく打ち込んだ。

返ってきた文章を読んだとき、 何かが、少しだけ動いた気がした。

「そうか」でも「なるほど」でもなく、 もっと静かな感覚。

頭の中でぐるぐるしていたものが、 外に出た、という感じ。

出てみて初めて、 その形が見えた、というような。

子どものころ、 日記を書いていた時期があった。

書いた内容より、 書いた後の感覚のほうが 記憶に残っている。

頭の中にあったものが外に出ると、 少しだけ軽くなる、あの感じ。

あの夜の感覚は、 それに少し似ていた。

AIが答えを出したのではなかった。

ただ、鏡のように こちら側を映してきた、 そういう感じがした。

答えを返す存在というより、 自分の思考を 少し整えてくれる場所、 かもしれない。

断言はできないけれど、 あの夜の感覚は、そういうものだった。


感覚の変化

それからしばらくして、 何かがずれた。

「AIを活用しなければ」という感覚が、 少しだけ薄くなっていた。

成果が出たわけではない。 何かが解決したわけでもない。

変わったのは、距離感だけだった。

少し遠かったものが、 少し近くなった、 というくらいの変化。

ハンマーを手に取るとき、 「ハンマーを使いこなせているか」とは 考えない。

それと同じような感覚が、 少しだけ近づいてきた。

道具に対して、 向き合いすぎていたのかもしれない。


過去との照合

思い返すと、似たことがあった。

スマートフォンが出てきたころ。

「使えていない気がする」 「もっと活用しなければ」と、 どこかで焦っていた時期があった。

電車の中で、 隣の人の画面を 横目で見ていたことがある。

何かアプリを使っていた。 自分には使いこなせていないもの、 そう感じた。

その少し後、 パソコンで表計算ソフトを 初めて触った日のことも思い出す。

列と行の意味が わからなかった。

でも今は、 何も考えずに開いている。

今は焦らない。

必要なときに手が伸びる。 ただそれだけになっている。

その状態になるまでに、 何年もかかった。

特に何かを学んだわけではなく、 ただ時間が過ぎて、 距離感がなじんでいった。

AIツールも、今はそういう途中なのかもしれない。

社会全体が、 まだ距離をつかもうとしている。

そういう時期に、 自分もいるのだと思う。


未来の可能性

AI仕事の形は、 これから変わり続けるだろう。

どう変わるかは、わからない。

朝、通勤電車の窓から 外を見ていた。

景色が流れていく。

特に何も考えていなかった。 ただ、光の加減が きれいだと思った。

そういう時間が、 これからも続いていくのだと思う。

ツールが増えれば増えるほど、 「何を使うか」より 「何のために使うか」という問いが、 重くなっていくような気がする。

その構造は、 これまでの道具と 変わらないかもしれない。

変わらないものがある、と気づくと、 少しだけ、落ち着く。


余白として

AIに何を聞けばいいか、 わからなくなる夜がある。

ツールを開いたまま、 指が止まる。

冷めていくコーヒーの 湯気が消えるのを、 ぼんやり見ていることがある。

それは、何も間違っていないと思う。

道具は、 使い方に迷うことがある。

迷ったまま、 また翌日が来る。

カーソルが、 また点滅している。